『ニューモラル』令和2年 家族のきずなキャンペーン特別号

『ニューモラル』令和2年 家族のきずなキャンペーン特別号

販売価格: 25円(税込)

重量: 16g

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かけがえのない存在 皆さんにとっての家族とは、どんな存在でしょうか。 いつも一番近くで見守り、応援してくれる。喜びや楽しみを、分かち合うことができる。つらいときや悲しいときも、そばにいてくれる。困ったときは、助け合うことができる……。たまにけんかをしたり、叱られたりするのも「家族であればこそ」なのかもしれません。 そんな家族との「かけがえのない日常」を、今、見つめ直してみませんか。 私の名前、お母さんの名前 「おばあちゃん、呼んだ?」 名前を呼ばれた気がして、台所をのぞきに行った結衣さん(9歳)。すると、おばあさんが振り向いて言いました。 「あら、結衣ちゃん。今のは『ゆり』って、お母さんを呼んだのよ。もう出かけちゃった?」 「うん。おばあちゃんにお使いを頼まれたって言ってたけど……」 春休みのある日、結衣さんはお母さんと一緒に、田舎のおじいさんとおばあさんの家に遊びに来ていました。 ふだん、両親と結衣さんの三人で暮らしている家の中では「お母さん」としか呼ばれないお母さん。でも、こうして田舎に来て、おじいさんやおばあさん、親戚のおじさんやおばさんと顔を合わせると、お母さんは「祐里子」になるのです。結衣さんには、それが不思議に思えるときがあります。なんだかそこには「自分の知らないお母さん」がいるような気がするからです。 私の知らない「祐里子ちゃん」? 「お買い物、追加で頼もうかと思ったものがあったんだけど……。もう出かけたなら、また今度にしましょう」 そう言うと、おばあさんは台所仕事の手を止めて、椅子に腰を下ろしました。ひと休みするところのようです。 結衣さんは、思っていたことを何げなく口にしてみました。 「おばあちゃんはお母さんのこと、『ゆり』って呼ぶんだね」 「結衣ちゃんも、おうちではお父さんやお母さんから『ゆい』って呼ばれているでしょう。結衣ちゃんのお母さんも、小さいころから家族には『祐里子』って、名前で呼ばれていたのよ」 確かに結衣さんも、お母さんのお兄さんやお姉さんに当たるおじさんやおばさんたちが、お母さんのことをそう呼ぶのを聞いたことがありました。 そのときにもう一つ、思い出したことがありました。結衣さんより十歳ほども年上のいとこたちは、お母さんのことを「祐里子姉ちゃん」と呼ぶのです。 「じゃあ、彩花ちゃんたちがお母さんのことを『祐里子姉ちゃん』って呼ぶの は? 本当は『おばさん』なんだよね」 お母さんの子供のころは…… 「彩花ちゃんたちが生まれたのは、結衣ちゃんが生まれるよりもずっと前でしょう。まだ祐里子は学校に通っているころだったからね。 祐里子はきょうだいの中では末っ子だから、彩花ちゃんたちが生まれたときは妹や弟ができたようで、うれしかったみたい。とってもかわいがっていたのよ。だから彩花ちゃんたちも、小さいころから祐里子のことを本当のお姉さんみたいに思っていたんじゃないかな」 結衣さんが生まれる前の、お母さんの話。それは「自分の知らない話」に違いありませんが、「今の自分につながっている話」でもあるような気がしました。お母さんがかわいがっていたという年上のいとこたちは、今、「大きいお姉さん、お兄さん」のようにして、結衣さんのことを、とてもかわいがってくれるからです。 おばあさんは、ほかにもいろいろなことを教えてくれました。お母さんが小学生のころ、歌が大好きだったこと。得意だった教科のこと。スポーツがあまり得意ではなく、運動会の前に一生懸命練習したこと。みんなの大好物で、おかずに出るときょうだいで競争のようにして食べた、おばあさんの手料理。子供のころは苦手だったもののこと……。その中には「たまにきょうだいげんかをすると、お姉さんを泣かせてしまうことがあった」というような意外な話もありましたが、結衣さんが「私と同じだな」と思える話もたくさんありました。 おばあさんは、まるでつい昨日の出来事だったかのように、家族の大切な思い出や「お母さんの秘密」を話してくれました。 「私のお母さん」を大切に思う人 「おばあちゃんはお母さんのこと、なんでも知っているんだね」 結衣さんがそう言うと、おばあさんはますます優しい表情になります。 「おじいちゃんやおばあちゃんにとって、もちろん結衣ちゃんは『かわいい孫』だけど、お母さんだって『かわいいかわいい末っ子の祐里子ちゃん』よ。それは、お母さんがいくつになっても変わらないことなの。 だから、結衣ちゃんがお母さんを大切にしてくれるのは、おじいちゃんやおばあちゃんにとって、すごくうれしいことなのよ」 最近は、お母さんに口答えしたくなってしまうこともある結衣さん。でも「お母さんのお母さん」であるおばあさんが教えてくれる「祐里子ちゃん」の話を聞いていると、なんだか友達のような親しみがわいてくる気がするのでした。そのときです。 「ただいまー」 玄関から、お母さんの声が聞こえてきました。すると、おばあさんが結衣さんに笑いかけながら言いました。 「お母さんが帰ってきたわね。今の話は内緒。それじゃあ、みんなでお茶にしましょうか」 かけがえのない「自分」という存在 中国古典の『孝経』に、次のような言葉があります。 「身体髪膚、これを父母に受く。あえて毀傷せざるは孝の始めなり」 私たち一人ひとりの体は、髪の毛や皮膚に至るまで、すべて父母からいただいたもの。これを傷つけることのないように、自分自身を大切にしていくことが、親孝行の第一歩であるという意味です。 私たちは、誰もが父母から「いのち」を与えられて、この世に生まれてきました。特に母親は、まさに「いのちがけ」で出産に臨んだことでしょう。さらには誕生後も、親をはじめとする家族、またはそれに代わる大人たちの献身的な養育を受けたおかげで、今日を迎えているはずです。 そのようにして私たちを生み育ててくれた「親の立場」から見ると、わが子とは、どんなに成長しても「かけがえのないわが子」であり続けるのではないでしょうか。大人になり、社会的に自立して、経済的に豊かな生活を送るようになったとしても、親は常にわが子のことを心配し、気づかう存在なのです。 その父母が喜び、安心するのは、どんなことなのか―まずは「かけがえのない自分自身」を大切にすることだということを、この言葉は教えてくれているようです。 「親祖先の願い」に思いをはせる さらに考えてみると、私たちが今日あるのは、実際に生み育ててくれた父母や生活を共にしてきた家族のように「直接的にお世話をしてくれた人たち」のおかげだけではありません。 私たちの父母や祖父母にも、一人ひとりを生み育てた親があります。つまり、自分にとっての父母は二人ですが、その先には四人の祖父母と八人の曾祖父母が存在するのです。ここまで数えただけで、少なくとも十四人が「私のいのち」を支えていることになります。こうして自分自身の「いのち」の源をたどっていくと、数限りない「ご先祖様」が存在していたことに気づきます。そのうちの誰か一人が欠けたとしても、今の自分は生まれていないことになるのです。 この連綿と続く「いのちのつながり」の中で、祖先たちは何を思い、何を願って、次の世代へと「いのち」をつないできたのか―そのことに思いをはせるとき、自分自身を大切にし、よりよく生きようとする力が心の中に満ちてくるのではないでしょうか。 今、ここに存在する私たち一人ひとりは、次の世代の幸せを思って「いのち」をつないできた無数の祖先たちの願いの結晶です。その中でも父母や祖父母は、私たちにとって最も身近な「ご先祖様」ということができます。 たとえ今現在は親と離れて暮らしていたとしても、または親がすでに亡くなっていたとしても、「自分がどのような生き方をすることが、親祖先の安心と喜びにつながるのだろうか」と考えることが、私たちに心の安定をもたらし、人生を心豊かなものにする力を与えてくれるのではないでしょうか。 今ここにある「有り難さ」に感謝して 私たちは自分一人の力でこの世に生まれてきたのではなく、誰の力も借りずに生きているのでもありません。そのことを自覚したら「自分の人生なのだから、自分の考え一つでどのようにしても構わない」などとはいえないでしょう。 親から子へ、子から孫へと、絶えることなく伝えられてきた「いのち」。これを受け継ぐ私たちには、自分の「いのち」を大切にして、次の世代を育んでいくという役割があります。過去と未来をつなぐ存在としての使命に気づいたとき、私たちはそこに「生きる意味」や「人生の目的」を見いだして、力強い一歩を踏み出せるのではないでしょうか。 そして自分自身が「かけがえのない存在」であるのと同じように、周囲の人たち一人ひとりも「かけがえのない存在」です。それは自分の父母や祖父母、家族といえども例外ではありません。 現実の家族との関係は、人それぞれでしょう。親に不満を抱いたり、反発したりすることもあるかもしれません。そんなときは「一人ひとりはかけがえのない存在である」という事実と、そのありがたさを思い起こしてみたいと思います。 ありがたいという言葉は、漢字では 「有り難い」と書きます。つまり「そう有ることが難しい」「めったにないことである」という気持ちが込められた言葉なのです。私たち一人ひとりが今ここに生きていること、そして生活を共にできることは、それ自体がまさに「有り難いこと」といえるのではないでしょうか。 その自覚のうえに、自分も相手も大切にしながら、しっかりと人生を歩んでいくこと。それは親祖先が私たちにかけてくれた願いに応える道でもあるのです。
『ニューモラル』令和2年 家族のきずなキャンペーン特別号

販売価格: 25円(税込)

重量: 16g

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