先人の後ろ姿は、人の生きる道を教えてくれる――
明治の小学校教師が集めた「史実に基づく道徳教材」(全3巻)を復刻。
巻之二には、小学校3年生向けの逸話50編を収録。
廣池千九郎 著
A5判・並製 171 頁
【主な内容】
- 1.人民、国家に報ゆるの適業は農作なり
- 2.一片の工夫、よく闔村の富を致す
- 3.孝子は長く世に尊ばる
- 4.人は天に代わりて厚生利用を図らざるべからず
- 5.知識に男女なし、物事の発明は人を限らず
- 6.艱難と戦うて勝たざるものは真の勇者にあらず
- 7.平素事物に意を注ぐ人は世の進歩に後るることなし
- 8.泰山は一巻石の多きなり、千金は一厘銭の集まりたるなり
- 9.国を富ますの術他なし、物産を興すにあり
- 10.実に世を益するの心ある者は、富めども奢らず
- 11.艱難の荊棘は熱心の火に焚かるべし
- 12.正直の者は自然に福あり
- 13.孝子の一念、よく猛獣を斃す
- 14.家を守りてよく産を治め、夫に仕えてよく道を尽くすを真の美人という
- 15.千斤を抱くも人に謗られ、一銭なくして人に尊ばる、ただ仁と不仁とにあり
- 16.父母の己を愛せし心を心として父母に仕うべし
- 17.死生変わらざるは真の孝子なり
- 18.終身孝を尽くすも父母の恩に対して足らざるところあり
- 19.過ちては速やかに改むべし
- 20.己を利せんと欲せばまず人を利すべし
- 21.誠実は勤労外の報酬を得
- 22.世間の便利は工夫の母より産まる
- 23.人の誠は死生の間に障壁を作らず
- 24.子はよく父母の命に従い、身を労し心を尽くすべし
- 25.兄弟は相愛し、相保つべし
- 26.行いに昼夜明暗の別あるべからず
- 27.活発なる気性ありて後、活発なる利益を得
- 28.兵役は健全男子に生まるるの幸福を示すものなり
- 29.人、これを笑うも己の志を変ずるなかれ
- 30.辛苦を厭わず郷党の利益を図る者は義人なり
- 31.正しき辛苦の枝には必ず利益の花を見るべし
- 32.松柏の操は雪霜によって現る
- 33.柳条、折り来たって汗馬の鞭となる
- 34.節倹をなすは身分に関せず
- 35.農工商業は賎技にあらず
- 36.善を行えば善報あり
- 37.朋友の信義は難苦のときに見るべし
- 38.国家に有用なる産物はよく繁殖を図るべし
- 39人の幼稚は白紙のごとし、善悪染んで洗いがたし
- 40.事の成否は志の厚薄にあるのみ
- 41.他人を頼むは己を滅ぼすのはじめなり
- 42.粉骨して働けば貧のために斃れず
- 43.至孝の者はわが身の憂苦を知らず
- 44.孝は百行の本なり
- 45.礼節を守らざる富者は、これを守る貧者より賎し
- 46.定見ある者は流行に誘われず
- 47.利、大なるも一身のためにするは卑しむべく、小なるも公衆のためにするは尊ぶべし
- 48.死すもなお身を世益す
- 49.義理のためには身命を擲つ
- 50.嘉言善行を聞見して身に行わざるは能書きを読んで薬を服せざるがごとし
〔付録〕小学歴史歌
<著者略歴>
廣池 千九郎(ひろいけ ちくろう)
慶応2年(1866)3月29日、大分県中津市生まれ。青年期に教育者として初等教育の普及に取り組み、未就学児童のための夜間学校開設や、道徳教育の充実を目的とした『新編小学修身用書』の発行、日本初の教員互助会の設立などにも尽力した。さらに地方史の魁となる『中津歴史』を執筆、のちに『古事類苑』(日本最大の百科史料事典)の編纂に携わるとともに、「東洋法制史」という新しい学問分野を開拓、大正元年に独学で法学博士号を取得した。
大正15年、『道徳科学の論文』を完成させ、総合人間学モラロジーを創建。昭和10年、千葉県柏市に「道徳科学専攻塾」を開設し、モラロジーに基づく社会教育と学校教育を共に行う生涯教育をスタートさせた。現在、社会教育は公益財団法人モラロジー研究所、学校教育は麗澤各校(大学・高校・中学・幼稚園)を有する学校法人廣池学園へと受け継がれている。 昭和13年(1938)6月4日逝去。享年72。著書に『支那文典』『東洋法制史本論』『伊勢神宮と我国体』『日本憲法淵源論』『道徳科学の論文』ほか。